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2008年12月

 
 
 
 

■2008年12月29日(Mon):ザ・マジックアワー

「俺がデラ富樫だ!」

DVDで三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』を観る。俳優を殺し屋と騙す爆笑コメディー。面白過ぎ!評価★★★★★。映画の映画。三谷幸喜監督の深い「映画愛」を感じた。

特に面白かった場面(1)「俺がデラ富樫だ!」とボスに紹介する場面、(2)マフィヤとの取引で打ち合いのシーン、(3)綾瀬はるかが「ボスを今すぐ撃ち殺してください」と頼む〜偽デラ富樫がボスに迫る場面(最高!)。

キーワードは「カーット!」「ラッシュ」「マジックアワー」。タイトルのマジックアワーは映画用語で「日没後の太陽は沈み切っていながら、まだ辺りが残光に照らされているほんのわずかな、しかし最も美しい時間帯」のこと。

昔の有名な映画のシーンをパロった場面がたくさん出てきているらしいが、これは昔の映画を全然知らないので「くさい芝居やなぁ(笑)」っと雰囲気ぐらいしかわからない。これがわかるともっと面白いのだろう。

キャストもデラ富樫役の佐藤浩市をはじめ、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか、西田敏行と豪華であり、脇役の伊吹吾郎、寺島進、小日向文世、香川照之、甲本雅裕とたくさんの個性派俳優の演技も随所に光る!

綾瀬はるかを観るのは今回が初めて。今後、彼女の出演している他の作品を観たくなった。今上映中の作品では『ハッピーフライト』。『ICHI』はすでに上映期間は終わってしまい、DVD化を待とう。すでにDVDになっているのは『僕の彼女はサイボーグ』『雨鱒の川』。2009年4月公開予定の『おっぱいバレー』の先生役もするらしい。

最後に「ワン・チャイ」が何故か頭に残って離れない・・。

 


■2008年12月26日(Fri):奇跡のリンゴ

マイ兄絶賛の石川拓治著『奇跡のリンゴ』を読んだ。木村秋則の記録 。不可能と言われた無農薬のリンゴ栽培に成功。「目」による観察と「土壌」が重要。リンゴの木と畑の生態系を調和させる。評価★★★★★。学ぶべきことは非常に多い。

この木村秋則氏の話は、「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」で.2006年12月7日に放映されて、大反響があり、この本が生まれるきかっけになったそうだ。

【奇跡のリンゴ語録メモ】

・バカになればいいんだよ。一つのものに狂えば、いつか必ず答えに巡り合うことができるんだよ。

・福岡正信『自然農法』。目指したのは「何もしない農業」。つまり、それ自体で完結した自然のシステムを100%生かした農業ということ。その自然のシステムに、いわば人間に飼い慣らされた農作物をまかせるには、それなりのプロセスが必要だ。

・本当にそうなのだろうか?

・独学を始める。ありとあらゆるリンゴの本をとにかく読みまくった。

・山と同じ「やわらかな土」を再現すれば良い。この土はこの場所に棲む生きとし生けるものすべての合作なのだ。自然の中に「孤立して生きる命」はない。ここではすべての命が関わりあっている。すべきことは、「自然」を取り戻してうやることだ。

・雑草を抜くな。雑草が土を耕していてくれた。雑草は雑草で役割を果たしている。木を見て森を見ず。リンゴの木しか観ていなかった。

・農薬を撒くということは、リンゴの木を周りの自然から切り離しているということなんだ。農薬を撒いてから、生態系が壊れていた。生態系は無数の生き物によって生み出されるものだから。

・「自然の摂理」と「人間の都合」の折り合いをいかにつけるかという問題。折り合いのうかない部分が、虫や病気として現れていたわけだ。農薬は簡単にその問題を解決するが、その結果、自然のバランスは深い部分で傷つけられていた。現代の農業は「自然のバランスを破壊」することで成立しているのだ。

・自然というものの「驚くべき複雑さ」。その複雑な相手と簡単に折り合いをつけようというのが、そもそも間違いなのだ。自然の中には、害虫も益虫もない。それどころか、生物と無生物の境目さえも曖昧だ。生きとし生ける命が絡み合って自然は成り立っている。その「自然の全体」と付き合っていこう。「自然が織る生態系」と「リンゴの木の命」を調和させることが自分の仕事なのだ。

・酢が効果を現すには「人間の経験とか能力」が必要だ。逆に言えば、自然を知れば知るほど、酢の効果が発揮されるということだ。もっと自然をよく見ろ。もっと手を動かせ、とリンゴの木に言われているような気がした。

・自然は無駄なことをしない。5年目に根粒菌がつかなくなったのは、畑の土壌に十分な窒素が行き渡ったからに違いない。

・自然界の現象は、実験室で起こる現象のように、「たった一つの原因から生じているわけではない」。人の目には些細なn変化でも、その裏側には互いに絡み合った無数の原因が隠されている。

・百姓は百の仕事という意味。百の仕事に通じていなければ、百姓は務まらない。自然を細切れに分解して理解しようというのが自然科学のつまり学者の方法論とするならば、自分がなすべきことはせの正反対だ。自然は細切れなどにはできない。自然の中に、孤立して生きている命など存在しない。バラバラに切り離すのではなく、「一つのつながりとして理解」する。無数の命がつながり合い絡み合って存在している「生きた自然の全体」と向き合うのが百姓の仕事なのだ。だから、百の仕事に通じなければならない。

・こうすればああなるという「一対一の因果関係」ではない。肥料は与えない。リンゴの根を傷める原因となる農業機械は一切畑に入れない。畑に雑草をはやし、土を自然の状態に近づける。土壌に窒素が不足していれば、大豆をまく。リンゴの木に「秋」を教えるため、秋には一度だけ草刈をする。病気の発生の兆候を見極めて、頻繁に酢を散布する。害虫が増えだしたら、発酵リンゴの汁を入れたバケツを木に下げる。葉脈を見ながらリンゴの木を剪定する。農薬を肥料の代わりに、木村は自分の目と手を使い、生態系という自然の摂理を生かして、リンゴを育てている。

・木村のリンゴが美味しい理由⇒テロワール。大地の香り。ブドウの育つ土地の地質学的性格が、ワインの味や香りに深い影響を与える。この土地に由来するワインの特徴を「テロワール」と呼ぶ。

 


■2008年12月24日(Wed):超「超」整理法

「分類するな。検索せよ!」

野口悠紀雄の『超「超」整理法』を読む。15年前には考えられなかったデジタルオフィス実現。Gメール革命。PDFを使う。「知の産業革命」の時代。評価★★★★★。非常に面白かった。「Web進化論」を読んだ後のように、いい新時代がやってきたんだと元気がでてきた。

著者は「夢にみたデジタルオフィスの時代がやってきた」と感激しているおり、年齢は68歳。同時に本書を読み、いい時代になったと感激している私は30歳。まだビジネスマン駆け出しの時期に、「知の産業革命」の時代にめぐりあえたことにも感激している。世の中は「大不況」のはじまり観たいなネガティブな雰囲気だが、この本を読んだ直後の私はとてもポジティブな心境だ。

【語録メモ】

・未来の経済環境を完全に予測することはできない。試行錯誤で進むしかない。出発点は「現状を変える」ことだ。「変化の中から可能性」が生まれるだろう。「知の産業革命」のために前進せよ!

・大組織と個人の情報格差は解消した。むしろ個人の方が有利な場合もある。大きな組織は「変化に対する適応性」が乏しい。

・日本が地盤沈下する基本的な原因は、情報処理の世界で生じているこのような驚天動地的大変化に、日本の社会構造が適切に対応していないことなのだ。

・日本企業の従業員一人あたりの時価総額は、アメリカの先進企業に比べると著しく低い水準にある。原因は、日本人が大組織の中で能力を発揮できる機会を与えられていないことにある。「年功序列」を基本原理とする日本型大組織の中では、「若い知的労働者が搾取」されているのだ。

・日本社会は「同質」だ。20世紀型の経済活動では同質性が強みだった。21世紀の技術体系の下ではそれが最大の弱点になってしまう。だから「変化」が必要である。変化をチャンスに転化するための条件。「皆と同じことをしない」。むしろ、必要に応じて逆方向に動く。「みんなと同じことをしていては、チャンスはない」と考える。

・知的作業で重要となるのは「問題の設定」「仮説の構築(⇒検証)」「モデルの活用」の三つである。データベースの検索で具体的な「仮説」が無ければ、データ収集はごみの山を築くだけ。さらに「モデル」がなければ、その場しのぎの思いつきで、主張は支離滅裂になり虚空をさまよう。

・「モデル」とは、現実の複雑な世界を理解するために、現実を単純化し、本質的と考えられる要素を抜き出し、それらの間がどうなっているかを記述したもの。例は「古典物理学における力学の三法則」「需要と供給」。モデルを利用して対象の挙動を理解したり、予測したりする。「一貫性のある主張」をするにはモデルは不可欠だ。

・知的作業を助ける方法。(1)とにかく始める。(2)歩く。(3)寝ている間に考えが進むのを期待する。ただし、歩いたり寝たりする前に「材料を仕込んでおく」ことが必要。

 


■2008年12月23日(Tue):奈緒子

「雄介につなげ!」

DVDで映画『奈緒子』を観た。漫画原作。波切島高校の陸上部の駅伝の話。観た動機は、上野樹里が奈緒子役で出ていたので。この前みた「恋空」の三浦春馬が雄介役をしていた。原作は、スピリッツで連載されていたときにちらほら読んでいた。評価★★★☆☆。

高校駅伝の臨場感が出てたのは良かったけれど、ストーリーの「ありきたり感」から脱っしていないように感じた。「原作に負けている」というタイプ。昨夜、会社の皆さんと仕事の後10km走ったので、その分ちょっと感情移入はできたけど。

 


■2008年12月20日(Sat):青い鳥

「野口君おはよう」

京都シネマで映画『青い鳥』を観てきた。重松清原作。中学校の「いじめ」がテーマ。評価★★★★★。

阿部寛演ずる先生は「どもり」で口数は少ないのだが、その分か本質をついたことを言う。国語の先生でもある。

「本気の姿勢には、本気の対応をしなくてはいけない」
「責任をとるということ」

テーマの「いじめ」は難しい問題だ。学校だけでもなく、社会にでても、会社内でももちろん・・(昨年、実際に体験)。「パワハラ」と呼ばれる職場いじめが横行するところがある。そのとき、被害者は、加害者は、まわりの人間は、どういう行動をとればいいのか、どうすべきか。そういったことを考えさせられる映画だった。

「まきちゃんぐ」という歌手のオープニングソングの『鋼の心』と、エンティングソングの『さなぎ』も良かった。生徒役の本郷奏多がいい演技をしていた。何かの助演賞をとりそうだ。

 


■2008年12月15日(Mon):フローズン・タイム

DVDで『フローズン・タイム』を観る。2006年イギリス映画。フラれて不眠症になった美大生のベンが深夜スーパーで働く。評価★★★★★。

ユーモアたっぷり、美的なストーリー、時間をとめちゃう主人公、愉快なスーパーの仲間たち。なかなか面白かった。鑑賞後の満足度大!

一流のフォトグラファーが監督をした映画だけあって、「芸術的な静止世界」がテーマのラブストーリー。芸術に興味がある人には、おすすめのミニシアター系映画だ。

 


■2008年12月13日(Sat):リダクテッド

映画『リダクテッド/真実の価値』を京都シネマで観た。観終わった後のショック感は5つ星。評価★★★★☆。

この映画のポイントの1つ目は、監督が『ミッション:インポッシブル』を手がけたデ・パルマであること。

真実とは何か。イラクで起こった米兵による一家惨殺事件の「擬似ドキュメンタリー」。テーマも生々しいのだが、この「擬似ドキュメンタリー」というところも、この映画のポイント2個目。なんせタイトルは「リダクテッド【redacted】編集された」。

米兵が個人的にハンドビデオカメラで撮影したムービー映像、基地の監視カメラ、レポーターを交えたニュース局の中継映像、アラブ側のネット映像、とこれらの映像を観客は観ながら映画は進行する。

ストーリーは、実際にイラクで起こった米兵事件だが、米国本土では、無視されたという事件。

意味の無い検問所の仕事⇒爆弾テロ⇒問題事件⇒報復と話は進む。今観ている映像はフィクションではあるけれども、イラクでは実際には同様のことがたくさん起こっているんだろなぁ、とブルーで、かつ居心地の悪い心境に。

しかし、映画でないと、このような映像を見ることもないし、深く考える機会もないだろう。日本や米国のニュースでは放映されないし。2007年ヴェネチア国際映画祭「銀獅子賞」というだけでも、この作品を観る価値はあると思う。

そして印象に残ったのが映画で使用された曲。「どこかで聞いたことがあるなぁ」と思ったこの映画の曲は、『バリー・リンドン(Barry Lyndon)』。スタンリー・キューブリック監督が、1975年に撮影した18世紀のヨーロッパを舞台にした映画。この曲を知っただけでも、この映画を観た甲斐があった。

【redact】編集する
【redacted】編集された

⇒Google Video【Reacted】


■2008年12月10日(Wed):2008年の秀作映画

朝日新聞の夕刊の記事で、「4氏が選ぶ2008年秀作映画」というのがあった。4氏が誰かというのはさておいて、この映画のうち、「観たもの」と「まだ観ていないの」に分類してみる。

[観た映画]
■ぐるりのこと
■トウキョウソナタ
■闇の子供たち
■おくりびと
■歩いても歩いても
■実録・連合赤軍
■4ヶ月、3週と2日

[まだ観ていない映画]
■パーク アンド ラブホテル
■アキレスと亀
■ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
■シークレット・サンシャイン
■つぐない
■落下の王国
■ラスト、コーネーション

こうみると、邦画の秀作映画はほぼ観れている。洋画は見逃したのがほとんど。『4ヶ月、3週と2日』もDVDで観たとこだし。また観た映画のうち『おくりびと』以外は、京都シネマで観た作品ばかりだ。観ていないのも、ほとんど京都シネマで上映されていたはず。ということは、京都シネマは、配給映画の選択がよく、「あたりが多い」ということになる。逆に言うと、邦画でも、MOVIX京都や、二条TOHOシネマズで観た作品ははずれ率が高いということだ。

京都みなみ会館は、京都シネマよりもさらに「マニアック」なミニシアター系映画をよく上映する傾向にある。ハイリスク・ハイリターンみたいなかんじかな。そういう意味でも、京都シネマは「バランスがいい」と言える。来年も「京都シネマ通い」は続きそうだ。ちなみに、京都シネマでは会員になると1000 円/回で観れる。わたくしはもちろん会員です。

今回記載した秀作映画は、すでにDVDがレンタルビデオ屋に並んでいるはず。今年の年末・正月休みは例年以上に長いので、これらの映画を制覇しよう。
これらの秀作映画の中でも『実録・連合赤軍 あさま山荘への道』は、観終わった後一番インパクトが強く、鑑賞直後は、人生が変わるのかと思った。いい映画を観た後によくあることだが・・。これと『ぐるりのこと』は間違いなくどこかの映画賞は受賞だろう。間違いない!この二作のような「これぞ秀作映画」という映画に出会うのが今後も楽しみだ。


■2008年12月07日(Sat):食堂かたつむり

「今は、訳あって声がでないのです。」

小川糸の『食堂かたつむり』を読む。評価★★★★★(5点満点:人にぜひ勧めたいレベル)。声を喪失したリンゴちゃんが故郷で食堂を開くという話。そして、個性豊かなキャラクターが登場。スナック・アムールのママをするオカン。飼い豚のエルメス。リンゴを色々助けてくれる熊さん。屋根裏に住む「ふくろう爺」。ネオコン。修一さん。

話は色々な客を相手に料理を出すことで進む。主題は「料理カンセラー」と言えるかな。一番印象深かったのは「拒食症のウサギ」。客は人間だけではないのだ。

また、話の随所に現れる主人公の「プロ料理人としての自覚の姿勢」が実にすばらしい。料理の話を読みながら自分が子供の頃、将来の夢として「料理人」を思い描いていたのを思い出した。他には、「太陽電池の研究者」と「農業」。進学の節目々で三択で迷ったが、現在はその一つに就くことができた。夢がかなった?また夢のおかげか家庭で料理をするのも好きだ。なので、この手の料理話も読みながら興味がフツフツと沸いてくる。残りの二つもいつかは「仕事」としてやってみたい。今の一つ目を片付けてからかな。

料理の話の中で、この一文が好きで、強く印象に残った。「私はそのスープを一口味見しただけで、気絶しそうになった。もう、塩さえ入れなくてもいいほど、畑の野菜だけで味が完成されていたのだ」。うーん、こんなに美味いスープを作ってみたい。まずくて「気絶」しそうになるという話は聞かなくもないが(大学のヨット部で伝説となった「揚げ玉丼」や「チータマ丼」など)、「美味くて気絶しそう」なんて・・すばらし表現だ。

最近、オーガニック野菜にも興味を持ちはじめており、この「畑の野菜だけで味が完成」というような自然パワーを考えながら、食材を選んだり、料理してみたりしている。「大地を守る会」や「らでぃっしゅぼーや」「Oisix(おいしっくす)」などをネットで観たり、資料取り寄せなどをしたりして、どうなんだろうと考え中。近所で、産直の小さな店を発見したのもこの成果。

ラストの、豚エルメスとオカンの話は、「命と食物」について考えさせられ、満足感のある感動を呼ぶ。この前観た、米国のファーストフード業界の暴露話の映画『ファーストフード・ネイション』(原作:ファーストフードが世界を食べつくす)とは対称的だ。食後というか読後、「読んで良かったな」と思え、また料理を見る目が変わるきかっけになるかもしれない小説である。著者小川糸(1973年生まれ)が今後どんな作品を生み出すかも楽しみだ。

 
 
 
 
原稿前月| 次月裏白南風
 
 
 

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